「伝統の森」で新しい布が生まれつつあるようです。
パムアンや絣スカーフに、新しい色の組み合わせやこれまで作られていなかった絣柄が登場し始めました。以下、メルマガ「メコンにまかせ」からの引用です。
みなさま、IKTT(クメール伝統織物研究所)の岩本みどりです。
伝統を大切にしながらも、時代にあった新しい商品を作りたいという思いが、ようやくかたちになりはじめました。
括り手、織り手と何度も話し合い、配色、柄、布の種類など、頭の中にあるイメージを職人たちと共有し、それぞれアイデアを出しながら、制作に取り組んできました。
その中でも「伝統の森」の括り手で、まだ小さな子供を抱えて仕事をしているホーイ。彼女にお願いしたのは「small swan」という絣の柄です。今まであったIkat scarf(絣柄のスカーフ)のなかでも、最も技術やセンスが試されるタイプの布です。でも、きっとホーイならできると確信してお願いしました。
始めは、少し躊躇したホーイでしたが、しばらくして「色はどうする? こんな感じで良いかな?」と話し始めてくれました。
織り手のソーンさんとは、柄を二重にするか、それともシンプルにするか、パムアンの部分の横糸の色はどうするか、織りの段階でも色々とアレンジしながら進めてきました。
現在の「伝統の森」では、30代の職人がとても逞しく、彼女たちの新たな感性が育ってきているように感じます。
そして、ソキアン。彼女は現在、古布の復元に挑んでいます。昔の布をそのまま再現するのではなく、彼女は自らアレンジしています。森本さんから唯一、デザイナーと呼ばれていたソキアン。その仕上がりがとても楽しみです。
IKTTTのスタッフは、毎日使っていただけるような布から、芸術品まで、今でも自然と人間の手で作り上げています。
これからもIKTTをよろしくお願いいたします。
「伝統の森」より 岩本みどり
(写真左がsmall swanという絣柄、写真右では織り手のソーンさんと括り手のホーイさんが相談しつつ、織り進めています。今後のIKTTを担う中堅どころの進捗がうれしいですね。)
IKTT Japanは、長い戦乱で失われつつあったカンボジア独自のすばらしい伝統織物の復興をつうじて、人びとの暮らしと、それを支える自然環境の再生を目指し、カンボジアで活動を続ける現地NGO、IKTT(クメール伝統織物研究所)と、その創設者である故・森本喜久男の活動を支援するために発足した非営利任意団体です。 IKTT Japan Newsは、おもに日本国内でのIKTTに関するイベント情報やメディア掲載情報をお伝えしていきます。
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2018-07-28
2018-07-06
KYOTO JOURNAL(vol.91)に森本さんの追悼記事が掲載されました
森本さんの一周忌にあわせるように、Holly Thompsonさんによる追悼記事が掲載されました。英文で発行されているKYOTO JOURNAL の最新号(vol.91)です。
KYOTO JOURNALは、2009年11月発売のvol.73でも、森本さんへのロングインタビューを元に、長文の記事を掲載していただいたことがあります。
KYOTO JOURNALは、2009年11月発売のvol.73でも、森本さんへのロングインタビューを元に、長文の記事を掲載していただいたことがあります。
2018-07-04
森本さんの一周忌を迎えて
「伝統の森」で、森本さんの一周忌が営まれました。この日にあわせ、岩本みどりさんがメルマガ「メコンにまかせ」に記した文章を引用します。
(写真は、森本さんの遺影の前で、手を合わせるIKTTのスタッフたち)
みなさま、IKTT(クメール伝統織物研究所)の岩本みどりです。
森本さんが亡くなってから、早いもので1年になります。
この1年間は、まるで1からスタートしたかのようにスタッフの意識も変化していきました。それは今までがなくなったのではなく、その上に新しいIKTTを築くための、とても重要な期間。
それぞれのチームリーダーが自覚を持ち始め、「心の込もった美しい布」をつくるために、自分たちの力でこれからもIKTTが続くように動き始めた瞬間でした。 熟練の職人たちも、若い職人たちも、一人また一人と、意識が変化していく様を間近で感じました。
正直、「伝統の森」にお越しになるお客様、市内のショップにいらっしゃるお客様、ともに少し減っています。しかし、これが現実です。森本喜久男という偉大な存在がいなくなった今、私たちは本当に布で勝負していくしかない。──そんなことは、初めから予想していたことでした。
私たちは養蚕、桑畑、工房作業のすべてを見直し、まずはPhamong(パムアン)という商品で結果を出しました。今ではIKTTでいちばん人気の商品となり、その中でも人気の色は在庫がすぐになくなってしまうほど。
『伝統は守るものではなく、作り上げていくもの』──伝統を守ろうとした時点で、それは後ろ向きに走ることになるのだと、森本さんはよく話していました。
それは「布」もそうですが、「IKTT」も同じこと。森本さんがその生涯をかけて作った「IKTT」を守るのではなく、私たち新しい世代が、新しい時代とともにIKTTを作り上げていきます。
今年の5月にはカンボジアの首都プノンペンで、一連の大きなイベントをさせていただき、プノンペン在住の日本人の方々やカンボジア人の方々のご協力により、大成功を収めました。これは私たちIKTTにとって大きな挑戦、そして新しいスタートでもありました。
また、藍染プロジェクト、ラック復活プロジェクトもスタートしました。これらは、昔からIKTTを支えてくださっている日本の方々のご協力なくしてはスタートできませんでした。
すべては、森本さんから繋いでいただいたご縁。協力してくださる方々に甘えるのではなく、教えていただいた基本をもとに、自分たちの力でできるように努力します。きっと皆様に自信を持って成功したとご報告できるまでには時間はかかると思いますが、楽しみにしていてください。
『次の世代に残すために』──まだ「伝統の森」を作り始める前の1999年の秋、機内から眼下に広がる森を見ていた森本さんが突然ひらめき、スケッチした「伝統の森の未来予想図」。そこに書き込まれていた文言です。
次の世代、つまり今の私たちに「伝統の森」は残りました。これからは私たちが、IKTTを、「伝統の森」を、「次の世代に残すために」よい仕事をしていきます。
これからもフェイスブックを中心に、日々の「伝統の森」の様子や情報などを発信していきます。これからもIKTTをよろしくお願いいたします。
「伝統の森」より 岩本みどり
(左から、手入れした桑畑、新しい裾柄の入ったパムアンのスカーフ、ラック復活のために「伝統の森」にあるラックのホストツリーを確認しているところ)