昨年、「伝統の森」を訪れた團雅司さんによるIKTTの映像です。
この動画以外にも、團雅司さんのWebサイト(Camaieu)には、IKTTの写真が紹介されています。
IKTT Japanは、長い戦乱で失われつつあったカンボジア独自のすばらしい伝統織物の復興をつうじて、人びとの暮らしと、それを支える自然環境の再生を目指し、カンボジアで活動を続ける現地NGO、IKTT(クメール伝統織物研究所)と、その創設者である故・森本喜久男の活動を支援するために発足した非営利任意団体です。 IKTT Japan Newsは、おもに日本国内でのIKTTに関するイベント情報やメディア掲載情報をお伝えしていきます。
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2010-06-22
2010-06-21
2010-06-14
IKTTで使われている染め材~プロフー
(左:乾燥させたプロフーの樹皮、右:写真左側がプロフーの樹皮、右側は樹皮を細かく刻み、染め液を煮出した状態)
【名称】
日本語:ガンボージ(雌黄あるいは藤黄)
英語:Gamboge
カンボジア語:プロフー(Prohut)
ラテン語名 [garcinia vilersiana]
【使用部位】
樹皮(bark)
【染色結果】
明礬媒染で黄、鉄媒染で緑。
【染色方法】
・樹皮を細かく刻み、煮出して色素を抽出する。
(左:育ち始めたプロフーの苗、右:工房に運び込まれたプロフーの幹)
【メモ】
・沖縄で紅型染めに使用されるフクギ(福木)と同じ染め材。
・周達観『真臘風土記』の「出産(産物)」の項には、「画黄(藤黄か)」との記述がある。そしてこの注釈には「藤黄は一種の樹脂で、黄色で絵画・顔料などの用に供する」とある。
・沢地久枝『琉球布紀行』には、城間栄喜の工房の周囲に茂る福木について、こんな逸話が記されている。終戦直後、「焼跡の仮小屋で紅型作家として再起の第一歩を踏み出すとき、栄喜はまず福木を植えようとした。(中略)全島に散らばっていた栄喜の友人たちは、各地からえりすぐりの福木の種子を栄喜のもとに届けたという。樹齢の多い福木の種子からは、つよいいい福木が芽生える。選び抜かれた福木の実が集まった。(中略)福木は春に小さな黄色の花をつけ、秋には丸い実となって生命をつないでゆく。そして樹齢が二百年近くなったとき、王家の色、高貴な色である「黄」の極上の染料をもたらす。」
・有機顔料としてのガンボージは、インドシナ半島のほか、スリランカなどで産する。
(乾燥させたフクギの樹皮、石垣島のギャラリーku-yaにて撮影)
関連記事 ⇒ IKTTで使われているおもな染め材 IKTTで使われている染め材~ラック
2010-06-06
溜息のでる布
6月4日に配信されたメールマガジン「メコンにまかせ」(vol.219)で森本さんは、次のように記しています。
ここ数日、なぜかバナナの絵を描きたいと思っている。少しボリュームのあるバナナの赤い花を中心に重なるバナナの葉を、写実というよりは少しモダンなラフなタッチで描きたいと思っている。紙もできれば全紙サイズの大きめの紙に、などと思いを巡らせている。
でも、あいかわらずのばたばたと過ごしながらの毎日。筆を手にするところまで到達できるかどうかも、まだおぼつかないのだが。
「お絵書き組」の絵の展示会をシエムリアップで開けるかもしれない、という話が持ち上がっている。それに向けて、というわけではないが、お絵描き組の女性たちに、少し気合いを入れて描くようにと、そそのかしている。いつもだったら、それで描き終えておしまいの絵も、完成度を上げるために、もう一度見直してさらに描き込んでみるアイデアを提案。ここ数週間、そんな彼女たちとのセッションのようなことをやり始めたことが、自分でも描きたいと思ったきっかけかもしれない。
美しいものを表現するということは、もちろんそんな簡単なことではない。仮にそのイメージが持てたとしても、それを実現する技量や素材がなければ実現しない。そして、なんといってもそれをやり遂げる心が必要である。
大切なことは、火花が走るような、その美しさを求める心を維持し、切磋琢磨することなのかもしれない。そのことで技術を磨き、正しい素材を求めることができる。世には、数千、数万の、ときには無限の美しいものが存在する。その美しいものと向き合い目眩がしたとしても、なおかつ己自身がそれを超える美を作り出せるのかどうか。そんなことを、ときに自問する。(中略)
人間国宝級の腕を持つ、「伝統の森」に暮らすIKTTの宝、おばあオムペット。彼女も、100年前のカンボジアの古布を超える仕事に、精を出し始めた。わたしが参考に渡したカンボジアの絣の古布のカタログから、そのエキスを自分の仕事のなかに取り込もうとして、その本を手に「この絣柄をやりたいのだが」とやってきた。70歳を超えてなお持続する、その情熱に頭が下がる。
そんな、おばあたちをトップに、IKTTは15歳から75歳まで、約300人ほどの三世代が一緒に生活しながら、布を作っている。10代の若い女性たちは、先輩から、その知恵や経験を学ぶ。子どもを抱えながら働く20代後半から30代の女性たちが主力部隊。そして、年配の女性たち。牛の世話をし、牛糞を桑畑に運ぶ男たち。それぞれが役割を持ち、力をあわせ一枚の布を作っている。
一枚一枚の布に心を込めて織り上げていく。そんな仕事ができること、そしてそんな環境があることが、大切なように思える。それは、量ではなく質の世界、溜息が出るような布を作りたい。そのことを、いま改めてはっきりと自覚し始めた。
そして、お絵描き組の女性たちが、初めての絵の展示会をシエムリアップで開催できることは、彼女たち自身にとって新しいステージを自らの力で切り開くことになる。ときにわたしに厳しく指摘され苦悩しながらも、夢は高く、誇りを持ってものを生み出していくこと。そんなすばらしい体験のときになればと思う。美の極みを目指すことは、そんな容易なことではないから。
【以上、メールマガジン「メコンにまかせ」掲載記事から抜粋、一部加筆修正】
※オムペットの写真は、「IKTTカレンダー2010」にも使用させていただいている内藤順司氏によるものです。
※メールマガジン「メコンにまかせ」の講読は、こちらからお申し込みください(講読無料)。
ここ数日、なぜかバナナの絵を描きたいと思っている。少しボリュームのあるバナナの赤い花を中心に重なるバナナの葉を、写実というよりは少しモダンなラフなタッチで描きたいと思っている。紙もできれば全紙サイズの大きめの紙に、などと思いを巡らせている。
でも、あいかわらずのばたばたと過ごしながらの毎日。筆を手にするところまで到達できるかどうかも、まだおぼつかないのだが。
「お絵書き組」の絵の展示会をシエムリアップで開けるかもしれない、という話が持ち上がっている。それに向けて、というわけではないが、お絵描き組の女性たちに、少し気合いを入れて描くようにと、そそのかしている。いつもだったら、それで描き終えておしまいの絵も、完成度を上げるために、もう一度見直してさらに描き込んでみるアイデアを提案。ここ数週間、そんな彼女たちとのセッションのようなことをやり始めたことが、自分でも描きたいと思ったきっかけかもしれない。
美しいものを表現するということは、もちろんそんな簡単なことではない。仮にそのイメージが持てたとしても、それを実現する技量や素材がなければ実現しない。そして、なんといってもそれをやり遂げる心が必要である。
大切なことは、火花が走るような、その美しさを求める心を維持し、切磋琢磨することなのかもしれない。そのことで技術を磨き、正しい素材を求めることができる。世には、数千、数万の、ときには無限の美しいものが存在する。その美しいものと向き合い目眩がしたとしても、なおかつ己自身がそれを超える美を作り出せるのかどうか。そんなことを、ときに自問する。(中略)
人間国宝級の腕を持つ、「伝統の森」に暮らすIKTTの宝、おばあオムペット。彼女も、100年前のカンボジアの古布を超える仕事に、精を出し始めた。わたしが参考に渡したカンボジアの絣の古布のカタログから、そのエキスを自分の仕事のなかに取り込もうとして、その本を手に「この絣柄をやりたいのだが」とやってきた。70歳を超えてなお持続する、その情熱に頭が下がる。
そんな、おばあたちをトップに、IKTTは15歳から75歳まで、約300人ほどの三世代が一緒に生活しながら、布を作っている。10代の若い女性たちは、先輩から、その知恵や経験を学ぶ。子どもを抱えながら働く20代後半から30代の女性たちが主力部隊。そして、年配の女性たち。牛の世話をし、牛糞を桑畑に運ぶ男たち。それぞれが役割を持ち、力をあわせ一枚の布を作っている。
一枚一枚の布に心を込めて織り上げていく。そんな仕事ができること、そしてそんな環境があることが、大切なように思える。それは、量ではなく質の世界、溜息が出るような布を作りたい。そのことを、いま改めてはっきりと自覚し始めた。
そして、お絵描き組の女性たちが、初めての絵の展示会をシエムリアップで開催できることは、彼女たち自身にとって新しいステージを自らの力で切り開くことになる。ときにわたしに厳しく指摘され苦悩しながらも、夢は高く、誇りを持ってものを生み出していくこと。そんなすばらしい体験のときになればと思う。美の極みを目指すことは、そんな容易なことではないから。
【以上、メールマガジン「メコンにまかせ」掲載記事から抜粋、一部加筆修正】
※オムペットの写真は、「IKTTカレンダー2010」にも使用させていただいている内藤順司氏によるものです。
※メールマガジン「メコンにまかせ」の講読は、こちらからお申し込みください(講読無料)。
2010-06-02
茨城キリスト教大学・内藤順司写真展「甦るカンボジア」始まりました
茨城キリスト教大学図書館での、フォトグラファー内藤順司氏による写真展「甦るカンボジア:伝統織物の復興が“暮らし”と“森”の再生に至るまで」が始まりました。
この写真展は、2月に東京広尾のJICA地球ひろばで開催された内藤順司写真展「甦るカンボジア」の大学巡回展という位置づけとなり、5月2日の帝塚山大学に続く、第2弾となります。
今回の写真展は、茨城キリスト教大学文学部文化交流学科と、同大図書館、ならびに同大言語文化研究所のご協力のもと、実現の運びとなりました。さまざまなご調整にご尽力いいただいた藤田悟先生、そして関係者のみなさま、ほんとうにありがとうございました。
と き:6月1日(火)~6月30日(水)
月曜~金曜 9:00~17:00/土曜 9:00~11:45
ところ:茨城キリスト教大学 図書館 1F開架閲覧室内
アクセス:JR常磐線、大甕(おおみか)駅隣接
※JR上野駅から約90分(特急利用)
この写真展は、2月に東京広尾のJICA地球ひろばで開催された内藤順司写真展「甦るカンボジア」の大学巡回展という位置づけとなり、5月2日の帝塚山大学に続く、第2弾となります。
今回の写真展は、茨城キリスト教大学文学部文化交流学科と、同大図書館、ならびに同大言語文化研究所のご協力のもと、実現の運びとなりました。さまざまなご調整にご尽力いいただいた藤田悟先生、そして関係者のみなさま、ほんとうにありがとうございました。
と き:6月1日(火)~6月30日(水)
月曜~金曜 9:00~17:00/土曜 9:00~11:45
ところ:茨城キリスト教大学 図書館 1F開架閲覧室内
アクセス:JR常磐線、大甕(おおみか)駅隣接
※JR上野駅から約90分(特急利用)