2012-05-31

上海へ


 5月31日付で配信されたメールマガジン「メコンにまかせ」(vol.270)で、森本さんは、上海での新たな取り組みについて記しています。以下、メールマガジンから引用します。

 2週続けて、シエムリアップと上海を往復した。
 上海での新たな取り組み。それは、不思議な縁で始まった無印良品との新しいコラボレーション。それは、伝統と現代のコラボレーションともいえる。
 自然染料は色落ちするという常識から、色落ちしない自然染料でなおかつ適正な価格での日常着での販売の実現を目指すもの。それは、新しい常識の創造。だが本当は、伝統の知恵を取り戻す作業でもある。
 前回は、必要な設備の準備と、自然染色の基本の手順を説明することに費やした。今回は、異なる6つの染め材を使って、実際にいくつかの製品サンプルを染めてみた。染め材は、中国の各地から集められた。たとえば、椰子の実は海南島から、茶の木の根は山東省から、シンセンからはバラの木が届いた。
 いちばん驚いたことは、若い中国人のスタッフの好奇心と積極的な作業への協力だった。それはエネルギッシュな、現在の中国を象徴しているように思える。今回の作業を通じて、今後の量産化への具体的な準備も見えてきた。もちろん超えなければならない課題はたくさんある。しかし、中国の熱心なスタッフであればそれを可能にすることができるはず。
 2度の訪問で、段取りはほぼ完了。これまでのわたしの経験では、特注の大きな寸胴鍋を使い、一度に10メートルとか20メートルの布は手染めでも可能。それを1000メートル単位で、一度に、それも草木で、堅牢度もクリアし、ムラなく、を実現させていく。生きモノの鉄媒染用の「おはぐろ」も、自家製で、それもトン単位を用意する(笑)。画期的なプロジェクトになるはず。

【以上、メールマガジン「メコンにまかせ」掲載記事から再掲】
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2012-05-21

草木染めの経験値


 5月21日付で配信されたメールマガジン「メコンにまかせ」(vol.269)で、森本さんは、かつてバンコクで「バイマイ」という草木染めシルクの店をやっていた頃の話を紹介しています。
 当時、ショップに並べられるシルクを、バンコクの自宅ガレージの染め場で、大きな寸胴鍋で手染めしているところを拝見したことがあります。
 そのころ、バイマイの仕事と並行して、東北タイの農村で草木染めのワークショップを開催したり、日本の百貨店からのオーダーで手染めシルクの布を卸したことがあるとも記しています。そして、大量に染める作業を繰り返し、失敗も含めた経験値が上がるなかで、はじめて見えてくる世界があるとも。
 こうした経験の積み重ねと、その後のカンボジアでの実績を踏まえ、今回、無印良品との草木染めを軸にした新たなコラボレーションが始まったのだと思います。以下、メールマガジンから引用します。

 80年代の後半、わたしはタイで「バイマイ(木の葉)」という自然染料で染めた手織りシルクの布と製品を売る店をやっていた。今でいうところのフェアトレードの店かもしれない。村の織り手に、自然染色の講習会をやりながら、そこででき上がった布を自分で買い、売っていた(笑)。
 当時は、すでに化学染料が当たり前。今ほど自然染料に対する関心や興味がなく市場は限られていた。店での主な客層は、タイ人の自営業の店主の女性たち。彼女たちは、草木染めという能書きよりも、それで生み出された色と本当の手織りの布の風合いが気にいってくれていた。その筆頭顧客は、なんとクイッティオという麺屋台のおばちゃん。屋台でクイッティオを出しながら、シルクの服を毎日着てくれていた。でも、汚れるんですね。で、汚れると染め直しを依頼しにきていた。
 そして、テレビの有名なキャスターさんも常連だった。彼女のテレビに出るときの衣装は、バイマイのシルクの服が定番になり、ある時期から無償提供した。そのかわりに、番組のエンドロールにバイマイの名が表示されるようになった。
 化学染料が当たり前だった村人に、昔なりの自然染料に回帰するためのワークショップを、東北タイの村で94年頃まで続けた。そのうちのいくつかの村は、いまではタイを代表する手織りと自然染料の布で有名と紹介されるまでに。明礬や鉄漿(おはぐろ)などの媒染を使った自然染料の定着と発色のためのノウハウや、乾燥したラックを使った染め方が、村に根付いていると聞いた。村でたずねるとわたしたちは昔からこうして使っていたというけれど、じつはわたしがワークショップで紹介したもの。それも、もう25年前のこと。四分の一世紀も経っているのだから、「昔から」と言われても嘘ではないのかもしれない。
 当時、日本のアパレルメーカーから頼まれ、手織りシルクの布を月々2000メートルほど、椰子の実やバナナの葉などの自然染料で染めて納めていたことがある。ほぼ1メートル幅の布を長さ20メートル単位での手染め。でも、染めの道具は普通の少し大きめの高さ1メートルほどの寸胴ステンレス鍋、染めの材料の煮込み用には、一回り小さい60センチのものをいくつか。一度に20メートルの布を2枚づつ。一日に4枚から6枚。液量が多いからまったくの力仕事、あまりの量と重さに電動ウインチの設置を真剣に考えたことも。
 染められたシルクの布は、バンコックにある日系の縫製メーカーの手でブラウスなどになり、日本のデパートで販売されていた。それが一年と少し続いた。好評だと聞いていたのだが、突然オーダーが止まった。数年後、偶然そのアパレルメーカーの社長さんに空港でお会いした。わかったことは、バンコックで間に入っていた現地のタイ系商社が、仕事を系列業者に流したようだ。しかし、もちろん偽の草木染め、シルクのクオリティも違う。社長さんも不審に思っていたという。しかし、現地商社の話では、わたしが断ったためにそうしたという、嘘の話になっていた。真剣な、笑い話といえる。
 でも、その仕事をしたことで、自然染料で布を大量に染めるためのノウハウを学ぶことができた。そして、普通、草木で染めた場合に難しいといわれてきた同じ色で反物違いの布を千メートル単位で同じ色に染め上げる、そのための技術も身につけた。2万メートルを超える布を染めたことで得られた、技術的なことも含めた経験値。
 京都時代、わたしは手描き友禅の職人だった。毎日、キモノに絵を描き、染める仕事をしながら、オイルショック前後、幸いにヒット商品と呼ばれるようなものも創ることもあった。同じ柄を100枚描き終えて、はじめて見えてくる世界があることも学んだ。99枚では見えてこない職人技の世界といえる。そんな経験をしてきているから、自然を相手に数万メートルの布を染め終えて、初めて見えてきた世界がある。

【以上、メールマガジン「メコンにまかせ」掲載記事から再掲】
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2012-05-14

6月9日、青山・環境パートナーシップオフィスでの報告会のご案内

森本さんの一時帰国にあわせ、報告会を開催することになりました。会場は、これまでにも何度もお世話になっている、青山の環境パートナーシップオフィス(EPO)の会議室(ミーティングスペース)です。

■森本喜久男・現地からの報告2012 「森の知恵~自然の恵みを色にする」
と き:6月9日(土)/12時から16時まで(展示と販売)
タイムテーブル:開場=12時
         VTR上映=13時から
         森本喜久男による現地報告=14時から
ところ:環境パートナーシップオフィス(EPO) 会議室(ミーティングスペース)
    渋谷区神宮前5-53-67コスモス青山B2
    表参道駅B2出口より徒歩5分
    入場無料、予約不要
【問い合わせ先】information@iktt.org(@を半角に変えて、ご送信ください)
アクセス:青山学院大学の向かい、国連大学の裏手のビルにある青山ブックセンターと同じフロアにあります。
※最寄駅:表参道駅からB2出口を出て、そのまま道沿いに直進し、約5分ほどで国連大学のビルが見えます。

2012-05-10

『メコンにまかせ』復刊リクエスト投票キャンペーン


 当ブログの左サイドバー中ごろに、『メコンにまかせ』復刊リクエストというサブウインドウがあります。
 これは、復刊ドットコムという会社が、品切・絶版になってしまっている書籍を復刊させるサービスです。簡単にいうと、リクエストが100件集まった書籍について、発行元の出版社に再版(復刊)していただくよう、交渉するというものです。ながらく品切れになってしまっている『メコンにまかせ』について、これまで11票の復刊リクエストが寄せられています。
 現在、復刊ドットコムでは、「復刊リクエスト」投票キャンペーンを行なっています。5月31日までに復刊リクエスト投票を行うと、Tポイント30ポイントがもらえるとのことです。
 詳細は、復刊ドットコムの「復刊リクエスト」投票キャンペーンをご覧ください。

2012-05-06

ブログ「世界八十八湯温泉道 世界一周 極楽エクスプローラーの旅」のご紹介


 昨年10月に「伝統の森」を訪れた賢太郎さんが、ご自身の旅行記ブログ 世界八十八湯温泉道 世界一周 極楽エクスプローラーの旅 のなかで、森本さんへのインタビューを、4回にわたって記されています。  4月21日付の『いま、世界を変えている日本人』第三弾 森本喜久男さんから、4回連続での投稿です。