「蚕まつり」とは

 以下、IKTT代表の森本喜久男さんからのメッセージです。

【蚕まつりとは】
 わたしたちIKTTは、カンボジア伝統の絹織物を制作しています。そして、その絹織物を販売することで、わたしを含め400人近い研修生たちの生活が成り立っています。いわば、お蚕さんに「食べさせて」もらっているのです。
 しかし、生糸を取るためには、そのお蚕さんを繭のまま釜茹でにします。つまり、殺生をすることになります。カンボジアでは多くの人たちが敬虔な仏教徒です。仏教徒にとって、殺生はしてはならないことのひとつです。わたしが15年前、カンポット州のタコー村で伝統的養蚕を再開しようとしたときも、村びとのなかには「殺生するのはいや」という声がありました。しかし、わたしは、これは無益な殺生ではないのだ、わたしたち自身がそれで生かされているのだ、と村びとたちに説明したのです。
 「伝統の森」に桑の苗を植え、その苗が大きく育ち、養蚕を開始したのは、2003年の夏のことです。その蚕たちの繭からはじめて生糸ができたとき、わたしはタコー村での出来事を思い出しました。そして、わたしたちがこの地でアンコールの神がみに生かされていることに感謝し、さらにはお蚕さんに生かされていることに感謝して、蚕を供養をしようと思い立ちました。古い中国の資料にも、蚕を祭る儀式があったことが記されています。日本やベトナムには、蚕寺があるそうです。養蚕が盛んだったところに、蚕を祭る習慣があっても不思議ではありません。2003年の9月の満月の日、「伝統の森」で、はじめて蚕まつりを催しました。午前中は、お蚕さんを供養する儀式を行ない、IKTTの研修生全員で昼食をとります。食事の準備もみんなで分担して行ないます。食事のあとは、青空ディスコで盛り上がるのが定番となりました。

【前夜祭としてのファッションショー】
 2008年からは、蚕まつりにあわせて「前夜祭」を行なうことにしました。そのメインイベントとなるのが、ファッションショーです。ショーのステージに上がるのは、すべてIKTTのメンバーです。毎日、生糸を繰っている研修生や、織り機に向かっている織り姫たちが、ステージに上がります。基本にあるのは、「自分たちが織り上げた布を、自分たち自身でまとってステージに立つ」ということです。自分たちの作っているものは、こんなにもすばらしいものなのだということを、IKTTのメンバーのひとりひとりに理解してほしいと思うのです。
 同時に、実際に身にまとったときのクメールシルクの輝きと美しさを、ご来場いただいたみなさまにも実感していただきたいと思っています。
 みなさま、ぜひとも「伝統の森」にお越しください。そして、「蚕まつり」と前夜祭のファッションショーをご覧いただきたいと思います。お待ちしています。
[以上、2010年8月作成]

※「伝統の森」での蚕まつりならびにファッションショーに関するこれまでの情報は、サイドバーにあるラベルから<蚕まつり>の項目を選択していただければ、ご覧いただけます。
 また、2008年のファッションショーを含む「蚕まつり」については、ビデオジャーナリストの寺嶋修二氏により、DVD化されました。ご希望のかたは、サイドバー上部にあるボタンDVD[蚕まつり2008]の申し込みをクリックして、DVD販売サイトからお求めください。