IKTT(クメール伝統織物研究所)の森本さんが、現地で取り組んでいるプロジェクト「伝統の森・再生計画」のプロジェクトサイトを指します。
どこにあるの?
シエムリアップ州アンコールトム郡のピアックスナエンと呼ばれる地域にあります。シエムリアップの町からは、アンコールトムを抜けて北へ車でおよそ1時間ほど、バンテアイスレイやプノムクーレンに向かう途中に位置します。【地図はこちら】
どんなところ?
2010年7月現在、森本さんをはじめ、IKTTのスタッフたちとその家族約200人が暮らしています。 カンボジアの伝統織物の制作が行なわれている工芸村エリアでは、養蚕に始まり、糸繰り、括り、染色などの工程を経て、一枚の絹織物に織り上げられるまでの、さまざまな作業が行なわれています。織り上がった絣布などを展示・販売するショップ&ギャラリー、訪問者が宿泊するゲストハウスも、この工芸村エリアにあります。
「伝統の森」のうち、ほぼ半分のエリアでは「森」の再生を促しています。残りの半分が開墾され、桑畑、綿花畑、藍畑そして果樹園と野菜畑に、また工芸村や居住地区、学校になっています。
いつ始まったの?
2002年7月に、まず約5ヘクタールの土地を取得しました。これが、「伝統の森・再生計画」の第一歩でした。翌2003年の2月からは、カンポット州タコー村の若者たちが住み込み、開墾に着手します。一方で、桑や染め材となる植物の苗を準備して育て始めました。こうして、シエムリアップの工房での織物づくりと並行して、「伝統の森」での森の再生と、新しい村づくりが始まったのです。荒れ地をひらき、道をつくり、少しづつ開墾エリアを広げ、そこに桑や藍の苗を植え、野菜畑をつくり、家を建てたりと、すべては手づくりです。その後、何度かの土地の拡張を経て、現在「伝統の森」は、約23ヘクタールの規模にまで広がりました。
なぜ森を育て、村までつくるの?
カンボジアの伝統織物の復興に携わるうちに森本さんは、織物を再生するだけではなく、織り手を育て、さらには織り手である村びとたちが暮らす自然環境までを再生しなければ、伝統織物を再生したことにはならない、と考えるようになりました。かつてカンボジアの村には、手の届くところに染め織りの素材があり、村の外から何も持ち込まなくても、すばらしい織物が生み出せる自然と環境がありました。そうした自然環境(=森)の再生と、その自然の恵みを上手に生かすカンボジアの人びとの「暮らし」と「知恵」の復活、それらすべてを統合したかたちで「伝統織物の復興」を進めようというのが、森本さんが「伝統の森・再生計画」と名づけたプロジェクトなのです。
[以上、2010年7月作成]