2010-01-03

「伝統の森」ビフォー&アフター[2004.6>2009.12]

 2004年9月、森本さんはロレックス賞(the Rolex Awards for Enterprise)を授賞しました。このロレックス賞とは「世界中の新規及び進行中の独創的かつ革新的なプロジェクトを実行している個人」に対し、ロレックス社から贈られるものです。
 ロレックス賞への応募は、すべての人に開かれています。応募申請者の学歴や経歴、所属ではなく、現に進行しつつあるプロジェクトの内容とその将来性のみが問われます。自薦他薦を問わず個人の資格で応募し、ほぼ1年間に渡る、いくつもの予備審査(書類選考、本人ならびに複数の関係者に対するメールでの質疑応答、プロジェクトの現地視察など)を経て、ロレックス本社での最終審査によって決定されるのです。
 2004年9月、パリで開催された第11回目の授賞式で、森本さんの活動の概要を紹介する映像が紹介されました。その映像を担当したナショナルジオグラフィックフィルムによって制作されたビデオ映像がYouTube上に公開されていることは、2009年10月5日付のこのブログで紹介したとおりです。
 このビデオ映像(3分割されて公開されています)のうちの3本目「Reconnecting the Threads (Part 3)」の最後のほうで、森本さんが「伝統の森」にできたばかりの小屋の階段の上がり口にマグカップを持って座っているシーンがあります(タイムスタンプは6:53~6:57)。
 森本さんの向こうには、牛が一頭と背の低い潅木の茂みが広がっているだけです。このカットが撮影されたのは、2004年の6月のことでした。
 先日、「伝統の森」でこのビデオ映像を見ながら、森本さんと「わずか4~5年のうちに、ずいぶん “森” は立派になりましたよね」という話をしました。そして、このシーンの “今” を撮ってみようということになりました。
 今回、ここにアップした写真は2009年12月撮影のものです。ほぼ同じカットながら、森本さんが眺める先には、枝葉を広げた木々の向こうに高床式の建物(二階がショップ、階下は織り機が並ぶ作業場になっています)の赤い屋根が見えています。この建物の手前の木々が豊かに茂っているのは、毎日欠かさず行なわれている水遣りの成果です。その水遣りのために「伝統の森」の工芸村エリアのあちこちには、潅水用の配水パイプが張りめぐらされてもいるのです。
 わずか数年のうちに、こうした仕組みまでを作り上げることができたからこそ、「伝統の森」が生きているのだと思います。それを絶妙のタイミングで後押ししてくれたのは、2004年のロレックス賞受賞であったことは、まぎれもない事実です。

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