森本さんがIKTTを設立した直後、つまり1996年頃の話です。
カンポット州タコー村での養蚕再開プロジェクトと並行して、プノンペン近郊のタクマオで始まったIKTT事務所の建設準備に追われるなか、その合い間をぬって森本さんは、タケオなどの織物の村へと出かけていました。
ユネスコの調査のときに知り合った腕のいい“おばあ”たちに会いに行き、アンティークショップなどで手に入れた古い絣布を見せて、「わたしの持っているこの布はずいぶん古くなってしまったので、これと同じものを織ってもらえませんか」と頼み込み、もう一度仕事をしてもらうことで、すばらしい伝統織物復興への第一歩を踏み出そうとしていました。
そんな“おばあ”のなかでも、森本さんが「人間国宝級」と称えたタケオのピエップおばあは、かつてIKTTのポストカードにもなっていました。
そのピエップおばあに織り上げてもらった、IKTTの活動のなかで初めて復元されたという、記念すべき絹絣が右の写真です。自然染料で染めたものではありませんが、たしかに「別格」と呼ぶべき精緻な括りの腕前であることが見て取れます。
参考:『カンボジアに村をつくった日本人』/第4章 伝統の「堀り起こし」/手の記憶
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