【IKTTとは】
IKTT 、すなわちクメール伝統織物研究所(Institute for Khmer Traditional Textiles)は、カンボジアの伝統織物、とくに絹の絣布の復興を目的に、1996年1月に森本喜久男さんがカンボジアで設立した現地NGOです。IKTTの活動については、http://iktt.esprit-libre.org/ をご覧ください(左上のボタンからもサイトにリンクしています)。
【これまでの活動の履歴】
IKTTの発足当初は、カンポット州タコー村での養蚕再開プロジェクトを進めつつ、タケオ州などのかつての織物産地をまわり、存命する織り手の発掘と制作依頼を行なっていました。同時に、研究所に何名かの織り手を呼び寄せ、絣の柄や自然染料の復元のための調査研究を進めていました。当時のIKTTの活動のポイントを説明する際に、森本さんは「伝統の掘り起こし」という表現を使っています。
2000年1月、森本さんは活動の場をシエムリアップに移します。そして、研究所に工房を併設し、研修生の受け入れを始めました。プノンペンから移ってきたスタッフは、森本さんを含めて5人。そこに、少しづつ人を受け入れ始め、生糸の扱い方から、染め・織りへと少しづつ仕事を教えていきました。新たな担い手を育てなければ、カンボジアの織物は廃れてしまうという危機感がありました。
織物の担い手は、女性がほとんどです。そして、周囲を見回してみれば、その日の食事を工面するのがやっとのこと、という生活をしている人たちがたくさんいました。内戦の影響なのか、父親のいない、あるいはダンナさんのいない女性たちが子どもを抱えて暮らしています。であるなら、苦しい生活をしている女性たちに働く場を提供し、仕事として伝統織物の技術を身につけてもらうというのが、もっとも着実に織り手を育てていく方法であると考えたのだと思います。
研修生の受け入れに始まり、新しい世代に、伝統織物をつくる技術と「すばらしい布をつくる心」を伝えていく作業を、森本さんは「伝統の活性化」と説明します。これが、IKTTの活動における、いわば第2期のテーマでもありました。
2002年7月、シエムリアップ州アンコールトム郡に約5ヘクタールの土地を取得しました。これが、現在の「伝統の森」となる第一歩です。翌2003年の2月からは、タコー村の若者たちが住み込み、開墾に着手します。一方では、桑や染め材となる植物の苗を準備して育てていきます。こうして2003年からは、シエムリアップの工房での織物づくりと、「伝統の森」での村づくり、この2つが並行して動いていくことになります。IKTTの歴史のなかでは、ここからが第3期ということができるでしょう。そして、この頃から、いろいろなことが動き出します。
2003年の秋には、福岡市美術館で「カンボジアの染織」展が開催されました。ここにIKTTの布が展示されたわけではないのですが、織りと括りのデモンストレーションのため、IKTTから2名のスタッフが福岡にやってきました。また、2003年12月には、在シエムリアップの学術系NGOであるCenter for Khmer Studies(センター・フォー・クメール・スタディーズ)と共同で、2日間にわたるカンボジアの染織に関するセミナーを開催。そして、2004年9月に森本さんは、第11回ロレックス賞を受賞します。この受賞をきっかけにIKTTの活動は、欧米からも注目を集めるようになりました。
2008年1月、森本さんは、自身の生活の場をシエムリアップから「伝統の森」へと移しました。それまでにシエムリアップの工房の作業場の半分以上が「伝統の森」に移転を済ませたこともあり、「伝統の森」での本格的な作業に取り組むため、文字どおり、森の住人となったのです。シエムリアップには、括りと織りを担当する部門の一部と、研究所の運営と生産管理を担うアドミニストレーション部門、そしてギャラリー兼ショップが、これまでどおりの仕事を続けています。森本さんは、週に何度か、必要のあるときに「伝統の森」からシエムリアップまで出勤しています。
2009-04-05
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