9月29日に配信されたメールマガジン「メコンにまかせ」(vol.257)のなかで、森本さんは、「伝統の森」をおそった洪水の状況について記しています。
今回の集中豪雨により、カンボジア各地で河川の氾濫や道路の冠水などが起きています。およそ20万人近い人々が被害を受け、うち死者が約150名、一時的な避難を余儀なくされている人々は2万人に及び、国道や橋梁などのインフラ及び学校や病院などの建物、そして農作物にも大きな被害が出ているとのことです(写真に見るとおり、「伝統の森」では、現在ほとんど水は引いているようですが)。以下、メールマガジンの一部を引用します。
「伝統の森」に至る、バンテアイスレイ寺院からの道が通行可能だと連絡が入る。いつものアンコールトム郡からの道は、途中約300メートルにわたって道路が決壊し、川になっているため通行不能。米を100キロ、インスタントラーメン3箱、そしてその他の食料品、子どもたちへのお菓子などを買い、村に向かった。
驚いたことに「伝統の森」のみんなは元気そうだった。顔を合わすと、笑顔が返ってくる。うれしかった。もっと深刻な状態を想定していたから。村の入り口のエリアは、これまでも水が来たことがなく、多くの村人はそこの家々に避難していた。海抜42メートル。今回冠水した所は、海抜39-40メートル。わずか数メートルの違い。
途中、前回の「蚕まつり」のときに濁流が流れていたところは、そのときよりも激しく渦巻いていた。一緒に行ったドライバーは怖いという。運転を変わり、水没した濁流の中、狭い道路の地形を思い出しながらハンドルを切った。滝つぼから出てきた激しい水の流れを横断するようなもの、気合を入れながらだった。そして、無事、冠水した工芸村エリアに到着。約20人ほどは、そこで頑張っていてくれた。
水没した面影のように、家の壁は、水位の跡を示すように色が変わっていた。そして、水草が木々に付着し、濁流の激しさを物語っていた。ショップのある作業建屋やわたしの家の階下は、激しい水の流れの痕が、タイルの上に砂の模様となって残されていた。積んであった染色用のライチの木片は多くが流され、一部が植木の根元に転がっている。階下にあった織り機、机や椅子、その他備品類の多くは流されてしまった。しかし、いくつかは、池の周りの木々に引っかかるように残されていた。この木々がなければ、すべて流されていたかもしれない。不幸中の幸い、これも、自然の力なのだろう。飼っていたアヒルは居なくなっていた。逆に、だめだと思っていた鶏は高い木々に避難していたので、大丈夫だという。牛は、幸い入り口に近いところに避難させていたおかげで助かった。
まだ被害の全体は見えないが、片付けをしながら「伝統の森」の復興事業が始まる。それは決して容易でないことは想像がつく。濁流に飲み込まれ孤立していたときの電話に、人の安全に念を押し、確かめるように話した。もともと、何もないところから、荒地を開墾しながらはじめた事業である。今は、何もないわけではない、経験をつんだ人がいる、すべては人が基本である。そして、土地も家もある。ゼロからの出発ではないと、自分に言い聞かせるように、村人のみんなにも話し始めた。
今年の「蚕まつり」では、王室や行政からIKTTの活動への感謝のお言葉をいただいた。これは、大きな励みとなる。そして、この洪水を契機に、新しい10年の始まりとしていきたいと、いま思っている。
【以上、メールマガジン「メコンにまかせ」掲載記事から再掲】
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以下、現地からの写真です。ゲストハウスの壁に残る水の跡、織り機の並んでいた高床式建物の階下の状況、木々に引っ掛かり流失を免れた机や備品、牛舎の柵に引っ掛かった水草。
2011-10-01
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