2009-04-10

『メコンにまかせ~東北タイ・カンボジアの村から』

【書誌データ】
書名:メコンにまかせ~東北タイ・カンボジアの村から
著者:森本喜久男
発行所:第一書林
発行:1998年4月1日
定価:2000円(+税)
ISBN:978-4-88646-138-7 C025

【内容紹介】
 1996年1月に、IKTT(クメール伝統織物研究所)は、カンボジアの現地NGOとして設立されました。2009年のいま、この『メコンにまかせ』を読み返してみると、本書はIKTTが設立されるまでの記録、まさにIKTT前史として読むことができます。
 IKTTを設立する前に、森本さんはどこで何をしていたのか。東北タイの村びとたちとどんなことを話し合い、何をしようとしていたのか。カンボジアユネスコのコンサルタントとしてのフィールドワークのなかで、どうやって村を訪ね、だれに話を聞き、どんな現実を目にしたのか。養蚕の経験のあるタコー村の人たちに出会い、彼ら彼女らとどうやって「伝統的養蚕」の再開にこぎつけたのか。そうしたさまざまな経験の延長線上に、いまの森本さんがあるのだと思います。
 京都で友禅染の工房を営んでいた森本さんは、1980年にはじめてバンコクを訪れクロントイ-スラムに滞在し、その後しばらくして、工房をたたみ難民キャンプのボランティアとしてタイに渡り、いくつかの紆余曲折を経て、東北タイの村びとと手織物と草木染に取り組むようになります。そうした経験の積み重ねが、森本さんとカンボジアを結びつけ、カンボジアで訪れた村でのちょっとした発見が、カンボジアユネスコのコンサルタントとしての調査実施へとつながっていったのです。そして、その調査の過程でカンボジアの伝統織物の現状をつぶさに知り、そのことで森本さんは、より深くカンボジアの伝統織物にかかわるようになっていきます。
 カンボウジュ種の黄金の生糸に導かれたかのように、日本からタイへ、東北タイの村からカンボジアへ、そして現在の「伝統の森」へと、森本さんの「現場」は移っていきます。そのときどきで適うべくベストな選択をしてきただけで、初めからカンボジアでIKTTを始めようと思っていたわけではないのにもかかわらず、振り返ってみると、すべてが現在のIKTTへと繋がっているように思えるから不思議です。
 この本には、現在のIKTTの活動をかたちづくる「下地」ともいえるさまざまなエピソードが詰まっています。東南アジアにおいて、よそ者の日本人が、現地の人たちを何かを成し遂げるために、一人の人間として必要なこと――NGOや国際援助の場で常に問われることの原点が、ここから見て取れるように思います。

※残念ながら『メコンにまかせ』は現在品切中です。「復刊ドットコム」というサイトで、復刊リクエスト投票を呼びかけています。復刊リクエストでの『メコンにまかせ』の復刊リクエスト投票、ならびに「復刊ドットコム」の詳細については以下のサイトでご確認ください。

▼『メコンにまかせ』復刊リクエスト投票
▼復刊ドットコム

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