「伝統の森」の菩提樹について、2月10日付で配信されたメールマガジン「メコンにまかせ」(vol.283)からの引用で、ご紹介します。
新年を迎え、「伝統の森」の入口近くにある菩提樹の参拝に、子どもたちと出かけることにした。この菩提樹は不思議な縁でここに植えられている。
12年前、シェムリアップの町の外れに住み始めた家。元々、そのあたりには古い中国寺院があったと思えるところ。内戦の混乱のなかで、その寺院は跡形もなく壊されてしまったようで、二軒隣の家の裏手には、当時の寺院の跡を物語るような石組みが今も残っている。
そんなところだから、大きな菩提樹の木があったとしても不思議ではない。わたしが、そこで暮らし始めてしばらくすると、家の前の地面から小さな菩提樹の芽が出てきた、最初はわたしも深く考えず、その10センチほどの新芽を、他の雑草と同じように切り捨てた。すると、またしばらくして新しい新芽がニョキと出てきた。不思議な縁だと、様子を見ながら、新芽が20センチほどになったときに、その出てきている石垣の隙間から細根を切らないように掘り起こし、とりあえず植木鉢に移した。幸いにも、そのまま根付き、育ってくれた。
ちょうどそのころ、動き始めた「伝統の森」再生計画。「伝統の森」の一角にその菩提樹の苗木を植えることにした。それからはや10年。「伝統の森」事業が育つのと同じく、菩提樹の木も育ってくれている。雑木林の中だから、周りの木も育ち、菩提樹のあたりは日陰になっていた。一年ほど前に周りの木を切り、菩提樹が育ちやすい環境にした、それから、ちょうど一年。
最近では、わたしは、どこか海外や長旅に出かけるときは、必ずこの菩提樹に挨拶して出て行くようにしている。不思議なもので愛着も湧いてくる。じつは牛の神様プレア・コーを奉納することを決めたとき、この菩提樹のそばにと初めは考えていた。ところが先日、気が変わった。もう少しこの菩提樹の木の周りを整備してから、牛の神様をここにお迎えしようと思うようになった。そのため、プレア・コーの奉納の儀式は、仮の家となる、わたしの家のそばで執り行うことにした。
シェムリアップにあった古い中国寺院の菩提樹が、今ではアンコールトム郡のIKTTの村に暮らし始めている。わたしは、菩提樹にはその古い中国寺院の神様の心が宿っていると、みんなに説明するようにしている。それは、本当の話。わずか20センチの木の芽が、今では7メートルほどの木に成長している。生命力とは、すごいもの。
中国正月の元旦の今朝、お年玉をもらって幸せそうな子どもたちも連れ、村の人たちと一緒に、この菩提樹へお詣りをすることができた。感謝。
「伝統の森」には、もともとの土地の神様、そして古い中国寺院の神様、近いうちには牛の神様もやって来られる。本当に八百万の神様に見守られながら「伝統の森」が末永く発展していってくれればと願うだけである。
【以上、メールマガジン「メコンにまかせ」掲載記事から、一部加筆訂正のうえ再掲】
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